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この裁判がどういう裁判なのか、弁護団が解説します。


  1.  本多勝一さんは、今年4月28日、「N」、「M」両少尉の遺族3人から名誉を侵害されたとして、東京地裁に訴えられました。本多さんが「中国の旅」(朝日新聞社、1971年11月)で、姜根福さんから聞き取った話として、「M」、「N」が上官からけしかけられ中国人の殺人競争をしたという話を紹介したことが名誉を侵害したというものです。

     両少尉が既に死亡した後で「中国の旅」は書かれているので死者の名誉が侵害されているかどうかが争点です。死者の名誉侵害については、書かれていることが嘘の事実かどうかが問題となります。

     本多さんの書いたことは真実です。本多さんが姜根福さんから聞き取ったことが真実であることは言うまでもありません。また、いわゆる「百人斬り競争」は、1937年当時、4回にわたり東京日々新聞に連載され両少尉がポーズをとった写真も掲載されていますし、その後も「N」少尉は講演を行うなど、両少尉自身が「百人斬り競争」を認めています。

     しかも、本多さんは、両少尉に配慮し、「M」、「N」とイニシャルで書いており、名誉の侵害はまったくありません。

     したがって、本多さんが書いたことは、名誉毀損にあたりません。


  2.  このように、名誉毀損にあたらないことがはっきりしているのに、また、本多さんが「中国の旅」を書いてから30年以上も経っているのに、なぜ、今この時期に裁判が起こされたのでしょうか。

     南京虐殺事件の事実が判決の中で次々と認められてきているので、南京虐殺事件を否定したい人々が政治的思惑から反撃しようとしたと考えられます。

     「南京虐殺」が存在したことは、既に、「家永教科書検定第3次訴訟」の東京高裁判決(国が上告せずに確定)、731部隊、南京虐殺等損害賠償請求訴訟の東京地裁判決で認められています。そして、藤岡信勝氏が「この裁判は法廷の場で、『南京虐殺』の存否を初めて本格的に争う絶好の機会となる」(1999年11月8日産経新聞「正論」)と位置づけた李秀英さんの名誉毀損事件においても、李さんが日本兵からレイプされそうになり瀕死の重傷を負った事実を否定した松村俊夫氏が、東京地裁、東京高裁と連続して敗訴、さらに上告は棄却され、李さんの勝訴が確定しています。

     存在した事実は事実として認めなければなりません。政治的思惑で南京虐殺という事実を歪曲してまで戦争を肯定しようとする人々の動きには、不安と危惧を感ぜずにはいられません。また、今回の提訴は、両少尉の遺族の方たちを政治的に利用して傷つけることにしかなりません。

     私たちは、真実を否定して南京虐殺という歴史事実を闇に葬ろうとする政治的動きを許さないために、真実のペンを奮う本多さんを応援します。


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