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史実を守るメールニュース第9号

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       ●○●○  史実を守るメールニュース  ●○●○
     南 京 へ の 道 ・ 史 実 を 守 る 会
             第 9 号
          2007年6月23日発行
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【 内 容 】史実を守る会会報より

▼西松建設強制連行訴訟判決にみる 戦後補償裁判のこれから 事務局 指環

▼歴史歪曲も甚だしい読売新聞社説 事務 高橋

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■西松建設強制連行訴訟判決にみる 戦後補償裁判のこれから■
 事務局 指環

 4月27日、最高裁第二小法廷が西松建設強制連行訴訟、第一小法廷が中国人「慰安婦」
 第2次訴訟で判決を下し、さらに劉連仁強制連行訴訟、中国人「慰安婦」第1次訴訟、中
 国人強制連行福岡訴訟の3件で決定を出し、いずれも中国人戦争被害者の敗訴が確定しま
 した。
  控訴審(広島高裁)が中国人戦争被害者側の請求を認容していた西松建設強制連行訴訟
 は破棄自判で、中国人「慰安婦」第2次訴訟は上告棄却判決で、他の3件は上告および上
 告受理申立てがいずれも不適法として決定の方式による棄却(上告受理申立ての方は却下
 )でした。

  そして、西松建設強制連行訴訟と中国人「慰安婦」第2次訴訟で最高裁は、中国国民個
 人の請求権問題について初の判断を行いました。
  中国国民個人の請求権問題とは1972年の日中共同声明により、中国側の政府としての賠
 償請求権だけでなく中国国民個人の賠償請求権まで放棄されたか否かという問題です。
 これについて最高裁は、日中共同声明により個人の請求権は「裁判上訴求する権能」が
 失われたものである旨を判示しました。
 
 日中共同声明には「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対
 する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」と、中国側の政府としての賠償請求権放
 棄については述べられているものの、中国国民個人の賠償請求権については言及がありま
 せん。にもかかわらず最高裁は、国民個人の請求権放棄を定めたサンフランシスコ平和条
 約の枠組みと異なる取り決めが日中共同声明においてなされたとは解されないとした上で
 、サンフランシスコ平和条約と同様に日中共同声明でも国民個人の請求権は放棄する旨が
 定められたと解されるとして、「裁判上訴求する権能」が失われたと判示したのです。
    この判断は日中共同声明の解釈について日本国側にのみ立った不公正なものです。また
 、そもそも個人の請求権を国家が勝手に放棄できるものではないはずです。
 全く不当な判決であり、厳しく批判されなければなりません。

 ただ、今回の最高裁判決は以下の点も注目すべきと思われます。

 第一に、最高裁は、西松建設強制連行訴訟と中国人「慰安婦」第2次訴訟ともに原審(
 控訴審判決)が認定した戦争被害の事実(日本の軍民による強制連行・強制労働・奴隷的
 酷使の事実、旧日本軍が中国人の少女を強制的に拉致・監禁し、継続的かつ組織的に性的
 暴力を加えた事実など)を判決文の中で再度述べ、原審で適法に確定していることを確認
 しました。
  上告審は法律審なので自ら事実認定を行いません。あくまで控訴審までに提出された訴
 訟資料に基づき、控訴審の法律判断を審査するのみです。
  けれども、最高裁が判決文の中で控訴審で確定された被害事実の認定を再度述べて確認
 した点は評価できるでしょう。

 第二に、最高裁は、「請求権放棄」問題について次のように述べています。

「サンフランシスコ平和条約の枠組みにおける請求権放棄の趣旨が,上記のように請求権
 の問題を事後的個別的な民事裁判上の権利行使による解決にゆだねるのを避けるという点
 にあることにかんがみると,ここでいう請求権の「放棄」とは,請求権を実体的に消滅さ
 せることまでを意味するものではなく,当該請求権に基づいて裁判上訴求する権能を失わ
 せるにとどまるものと解するのが相当である。」

 この「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく,当該請求権に基
 づいて裁判上訴求する権能を失わせるにとどまる」の意味ですが、一般に債権の効力は、
 弱いものから順に、給付保持力、訴求力、執行力という段階があると言われています。
   給付保持力とは任意に給付されたものを受け取って保持する権利(債務者から返還請求
 を受けることのない権利)のことで、訴求力とは判決手続で実体法上の権利の存否を判定
 してもらえる権利のことで、執行力とはその確定判決の内容を強制執行によって実現でき
 る権利のことです。
   今回、最高裁は、個人請求権は国際条約によって執行力はおろか訴求力までも失われた
 のだが、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく」と述べている
 ことから、給付保持力については国際条約によっても失われないと判断したものと解され
 ます。
  この給付保持力すらないとなると、これまで和解で被害者に支払われたものまで、債務
 がないのに弁済がなされたとして、不当利得返還請求を受けることになりかねませんが(
 訴訟上の和解であっても判例は制限的既判力説なので、そうなりうると思われます。)、
 それはないということです。
 (この給付保持力しかない債権は「自然債務」とも呼ばれ、強制執行によって実現可能
 な「法律債務」と区別されます。) 
  このような給付保持力しかない債権が存在することは、カフェー丸玉女給事件という戦
 前の有名な大審院の判決以来、認められているのです。
  つまり、債権者は裁判所という公権力の手を借りて債権を実現することまではできない
 が、非常に弱い形で債権自体はあり、債務者は自分の財産を差し押さえられるなどの強制
 執行をされることはないものの、債務を履行する義務が完全にないわけではなく、少なく
 とも道義的な履行義務ぐらいはある、ということです。
  従って、日本国や加害企業が、今後も戦争被害者への補償を拒み続ければ、少なくとも
 道義的な責任は免れないことになりえます。
 また、今後の戦後補償裁判でも、裁判所は終局判決によって解決することはできなくて
 も和解あっせんのイニシアを持つことは十分可能なのではないかと思われるのです。

■歴史歪曲も甚だしい読売新聞社説■
 事務局 高橋

5月6日の読売新聞に「南京事件70年 事実に基づいた議論が必要だ」という社説が掲
 載されました。これは南京大虐殺の史実と百人斬り裁判の判決に誤解を生じさせかねない
 ものです。問題のある部分を抜粋して指摘します。
「合法的な捕虜の処刑以外の殺人はごくわずかだった、とする説もある」
 南京では大量の捕虜が虐殺されましたが、それらが「合法的な処刑」だったとは寡聞にし
 て存じません。殺された捕虜は一人ずつ軍事裁判を受けていたのでしょうか?それはどの
 ような罪状だったのでしょうか?
 あるいは、「便衣兵(実際は敗残兵と疑われた男性)の処刑」のことを言いたいのでしょ
 うか?否定派は「軍服を着ていなかった便衣兵は国際法に違反し交戦資格が無く、捕虜に
 なる資格もない。だから処刑が相当」という主張を好みますが、社説では「捕虜の処刑」
 とはっきり記しているのでこの主張とも異なるようです。
「10年前、米国でベストセラーになった同書(アイリス・チャン「レイプ・オブ・南京
 」)は、数々の残虐な写真を掲載した。だが、『南京虐殺』を証明するものは一枚もない
 ことが、日本の研究者の検証で明らかになった。」
「レイプ・オブ・南京」には、揚子江の川岸に死体が折り重なっている有名な写真も紹介
 していますが、この写真について有名な否定論者である亜細亜大学教授の東中野修道氏は
「南京事件 証拠写真を検証する」の中で、虐殺の証拠ではなく戦死者か溺死者ではない
 かと述べています。しかしこの写真をよく見ると、後ろ手に縛られた死体を見出すことが
 できます(タラリさんのサイト「写真判定の杜撰 村瀬守保撮影写真編」をご参照下さい
 )。これは日本軍によって縛られ虐殺された死体ではないでしょうか?南京大虐殺を証明
 する写真ではないでしょうか?
 ちなみに「南京事件 証拠写真を検証する」の「エピローグ」のタイトルは「『証拠写真
 』として通用する写真は一枚もなかった」です。この社説を執筆した論説委員は同著を参
 考にしたのかもしれません。
 「2人の日本軍将校が100人斬(ぎ)り競争をしたという常識では考えられない話も現
 地にある「南京大虐殺記念館」などで紹介、展示されてきた。近年、遺族が2人の名誉を
 回復する訴訟をおこした。東京高裁判決は昨年、「『百人斬り』の戦闘戦果は甚だ疑わし
 い」とした。」
 皆さんご存知のように百人斬り裁判は昨年高裁で原告が敗訴し、最高裁も高裁判決を支持
 し判決が確定しました。高裁判決は「百人斬りの戦闘戦果は甚だ疑わしいもの」と述べつ
 つも、「百人斬り競争として新聞報道されることに違和感を持たない競争をした事実自体
 を否定することはでき」ないとしています。つまり戦闘中に敵兵を日本刀で百人も倒した
 という法螺話はともかく、無抵抗な捕虜や民間人に対する殺人競争が行われたことは事実
 であろうと裁判所が判断したわけです。
 しかしこの社説では、百人斬り競争など全くの虚偽であり裁判所がそれを認めたかのよう
 に書かれています。予備知識を持たずにこれを読めば原告が勝訴したと誤解するかもしれ
 ません。
 どうやらこの社説は南京大虐殺や百人斬り競争について知識がない読者に対し誤解を与え
 る目的で執筆されたようです。最大の部数を誇る読売新聞の社会的影響力は無視できない
 ものがあります。このような史実を歪めようとする行為は強く糾弾しなくてはなりません。

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最終更新日 ( 2008/06/17 火曜日 00:58:41 PDT )
 
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